凸版、古い謄本を自動解読

【参照元】:2022年11月10日 日本経済新聞 より抜粋

~明治の手書き文字も1分で変換~

凸版印刷は解読が難しい明治期から戦前の手書き文字の自動解読システムを日本で初めて開発した。

近代の戸籍謄本や土地・建物の登記簿謄本を効率的に解読できるようになる。銀行などの土地や物件の相続業務を支援する。所有者不明の土地は増えつづけ、全国の空き家率は1割を超える。新技術は土地所有者の特定に貢献し、国土の有効活用につながる可能性がある。

凸版は近代の手書き文字を自動で解読するシステム「AI-OCR」を開発した。開発にあたって神戸大学経済経営研究所と公益財団法人の三井文庫と連携した。

凸版は「AI-OCR」をテコに銀行から相続審査業務の受託を狙う。同社によると、相続審査案件の2~3割は近代手書き文字の解読が必要になり、戸籍謄本などの解読は審査時間の4割を占めるという。

審査部隊の熟練度には個人差があり、大半は初心者で構成されることも多い。誰でも高い精度で解読できるシステムは業務の効率化につながり、事業受託のアピールポイントになる。近代の閉鎖謄本や戸籍謄本を取り扱う不動産会社からも引き合いがあると凸版はみる。

同社の新サービスは日本が抱える土地の迷子・空き家問題解決の一助になる可能性がある。これまで解読が難しかった近代の戸籍謄本や土地・建物の登記簿謄本を読み解くことができれば、放置された土地や物件の所有者の特定につながるからだ。

有識者による所有者不明土地問題研究会の試算では、全国の所有者不明土地は16年時点で約410万㌶と九州(約370万㌶)を上回る。必要な対策を取らなければ40年には国土の約2割と北海道並みの面積にまで膨らみ、税の滞納などにより17年からの累計で約6兆円の経済損失が生じるとの予測もある。また、総務省の調査によると、全国の空き家率は14%に上り、「迷子の土地」とともに国土の有効活用を阻んできた。

関連記事