同性婚の議論促す地裁判決
【参照元】:2022年12月3日 社説 日本経済新聞 より抜粋
同性婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして、同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、同性カップルが家族になるための法制度が存在しないことについて「違憲状態」との判断を示した。
判決は、家庭生活に関する個人の尊厳などを定めた憲法24条2項をふまえ、「パートナーと家族になるという希望が同性愛者というだけで生涯を通じて不可能になることは、人格的生存に対する重大な脅威、障害」と指摘した。
具体的にどのような法制度にすべきかは「立法裁量に委ねられている」とし、判決全体の結論としては「合憲」としたが、現状を改善するための立法措置などの検討をうながしたものといえる。
多様性を認め、だれもが暮らしやすい社会を実現することは喫緊の課題だ。
自治体レベルでは、同性パートナーの家族関係を公的に証明するパートナーシップ制度が広がり、住宅の入居や生命保険の契約などに使われ始めている。
一方、国レベルの対応がない現状では、互いの法的相続人になれず、共同で子どもの親権を持つことができない。税や社会保障でも不利な状況に置かれる。
家族のあり方をめぐっては、国民のなかでもさまざまな意見がある。年代によっても違いはあろう。政府は「家族のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」との立場だ。
同種訴訟は全国5地裁で起き、先行して判決が出た2件でも違憲、合憲と司法判断は分かれている。
ただ、海外では同性婚を認める国も増えている。主要7カ国(G7)のなかで同性婚やそれに準ずる法的権利を認めていないのは日本だけだ。日本企業が国際化を進め、多くの外国人とも一緒に働いていくうえでも、この問題をいつまでも放置することはできない。
同性カップルに家族手当などを支給する企業も増えている。国会や法務省の法制審議会のような場で幅広く議論することを、避けるべきではない。